竹くく大学生パロ 『葉の色付く』 キャンパスの中で一番大きな通りをいつものように走り抜ける。 冷たくなった朝の空気は、布団の中では眠気を誘うのに、こうしていると頭をクリアにしてくれる。 目に入った木がなんていう木かは知らないが、懐寂しそうにたたずんでいる様子に何故だか少し切なくなった。 (もう夏も終わったんだな) 今は10月も終わり。 当たり前のことだが、今さらながらに季節の移り変わりを感じる。 あんなにも艶々とした緑色をたたえていた木も今や見る影もない。 ところどころ黄色や紅色になった葉も、茶色く枯れた葉と混ざっていては美しさにかけている気がした。 未来の近づいてくる足音が聞こえている。 もう少しでこの通い慣れた大学を卒業し、どこかで社会の歯車の1つになるのだろう。 先には何が待っているのだろうか。 「兵助!」 見慣れた少し珍しい緑色の自転車が、誰がやってきたかを教えてくれる。もっとも、さらに聞き慣れている声でわかっていたが。 「最近朝寒いな〜」 深緑のチェック柄のシャツに薄い上着、首には黒と紫のストールをまいている。 隣に並んだ竹谷の装いからも夏の気配は感じられない。 「なんかすっかり様変わりしたよなぁ。半袖着てる奴なんてそういないしな」 言われて辺りを見回すが確かに半袖を着てる人はほとんどみあたらない。 「変わっていくな」 「ん?」 ぽつりと言葉にすると、現実味を帯びて淋しさが募る。 俺の言いたいことを探るように見つめてくる竹谷も、いつか離れる時がくる。 「変わるのは怖いな」 その時の心の風景は今のこの木みたいなんだろう。 ********** 短い。 秋がやってくると寂しくなるよねっていう。 あとは、変化することはやっぱり怖い。 人間が生まれもつ未知への恐怖なのかな。